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禹徳淳 (続いて)写真を撮《うつ》しておけばよかったなあ、君と僕と――。
安重根 写真なんか、まだ撮せるよ、明日蔡家溝ででも。
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金成白が駈け上って来て、上り口で衝突しそうになる。
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金成白 (安重根へ)先生、いよいよ――。
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安重根は無言で、力強く金成白と握手する。「三夾河行き」、「いや、蔡家溝で下車」、「三人で停車場まで走るんだ」など安重根、禹徳淳、劉東夏の三人、口ぐちに大声に言いながら勢いよく屋根を降りて行く。柳麗玉も勇躍して、見送りに走り下りる。曹道先と金成白は手摺りに駈け寄って下を覗く。
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12[#「12」は縦中横]
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翌二十四日、深夜。蔡家溝駅前、チチハル・ホテル。
木賃宿の如きホテルの階上の一室。灰色の壁、低い天井、裸かの床《ゆか》、正面に廊下に通ずる扉《ドア》、ドアの傍に椅子一つ。窓はなし。片隅に毀れかかった鉄製の寝台が二つあるのみ、他に家具はない。
安重根、
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