の酒精漬けなど店頭《みせ》の戸外《そと》に並んでいる。左右は古着屋、乾物商などすべて朝鮮人相手の小商店。荷車、自転車など置いてあって雑然としている。低い家並みの向うは連山と、市街の屋根の重なる上に白い夕月。教会の尖塔がくっきり見えて、凹凸の石畳の下手に電柱が一本よろけている。
劉任瞻――医師兼薬剤師。老人、ロシアの農民風の服装。
劉東夏――その息子。十八歳。ルバシカに露兵の軍帽をかぶっている。
安重根、禹徳淳、柳麗玉、隣家の古着屋の老婆、ロシア人、支那人、朝鮮人等の男女の通行人。
夕闇の迫る騒がしい往来。店の前の椅子に劉任瞻が腰かけて、小笊《こざる》[#「小笊《こざる》」は底本では「小※[#「竹かんむり/瓜」、314−上−1]《こざる》」]に盛った穀物を両手に揉んでは、笊を揺すって籾殻《もみがら》を吹いている。ロシア人の裸足の子供の一隊、市場へ買出しに行った朝鮮人の女房二三、工場帰りの支那人職工の群などあわただしく通る。劉任瞻に挨拶して行く者もある。ロシア人の巡邏が長剣を鳴らして通り過ぎる。手風琴に合わして朝鮮唄の哀調が漂って来る。隣家の古着屋の老婆が、洋燈《ランプ》のほや[#「ほ
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