重根を抱き起している。
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安重根 (泪に濡れた笑顔)ははははは、大丈夫、起てるよ。(禹徳淳を認めて)おう! 徳淳――!
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よろめいて禹徳淳の手を握る。一同呆然と見守っている。
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安重根 (力強く)夜が明けたな。(裏口のそとに空が白んで、暁の色が流れ込んでいる)汽車の時間は、調べてあるのか。
禹徳淳 (手を握り返して急《せ》き込む)行ってくれるか。ハルビンへ行ってくれるか。
安重根 (哄笑)はっはっは、心配するな。(柳麗玉に支えられながら)旅費はあるぞ旅費は。はっはっは、たんまりあるぞ。
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黄瑞露は裏口の人を追って戸を閉めている。
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       10[#「10」は縦中横]

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ポグラニチナヤの裏町、不潔な洋風街路、劉任瞻韓薬房前。

十月十九日、夕ぐれ。

「韓国調剤学士劉任瞻薬房」と看板を掲げた、古びた間口の狭い店。草根木皮の類が軒下に下がって、硝子壜にはいった木の実、蛇
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