憲兵四 (上官へ)自分は知っておるであります。ここは有名な朝鮮人の博奕宿であります。
上官 ほほう、君もちょいちょい来ると見えるね。
憲兵四 違うであります。自分は――。
上官 黙っておれ! (倒れている安重根を軽く蹴りながら)こいつは死んでいるのか。
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と黄成鎬を見て、ひそかに右手の拇指と人指指を擦り合わせて示す。眼こぼし料を要求する意。黄成鎬は手早く紙幣を取り出して、近づく。
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黄成鎬 (安重根を覗いて)へへへへへ、なに、ちょいと眠ってるだけでございますよ、眠ってるだけで。
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自然らしく上官の傍を通る拍子に、そっとそのポケットへ紙幣を押し込む、憲兵ら一斉に咳払いをする。
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憲兵上官 うう、そうか。眠っているのか。眼が覚めたら介抱してやれ。(部下へ)引上げだ。
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禹徳淳、白基竜ら一同博徒らしく装い小腰を屈めるなかを、憲兵裏口より退場。近所の人々は逃げて道を開き、すぐまた覗きに集まる。柳麗玉は安
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