に会うと、いつもそうだ。口では極力止めながら、眼では、伊藤を殺せ! 伊藤を殺せ! と僕を――(爆笑)はっはっはっは、なるようになるさ。
柳麗玉 (必死にドアを押えながら)早く外套を脱いで、行李を――。
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安重根が気がついて帽子と外套をとり、卓上の衣類を行李に入れ終った時、ドアがあく。柳麗玉は安重根をかばって立つ。朴鳳錫を先頭に同志一、二、青年ら一団になだれ込んでくる。正面の廊下から黄瑞露がはいって来ておろおろしている。
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朴鳳錫 (柳麗玉を押し退けて)安重根! 貴様は――。
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腕を振り上げて迫る。「燈を消せ!」と誰かが叫んで素早く電燈を消す。隣室から、開け放したドアの幅に光線が流れ込んでいるきり、舞台は暗黒。一同「スパイの畜生!」、「弁解を聞く必要はないっ!」、「今日の行動で明かだ。」、「さんざん俺たちを翻弄したな。」、「やっつけちまえ!」喚声を上げて包囲し、揉み合う。青年らは続々隣室から走り込んで来る。禹徳淳、白基竜、黄成鎬は渦中に割りこんで大声に怒鳴り、手を振り、鎮撫しようと努
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