いとすると、時節柄、怪しまれるにきまっている――。李剛先生?(苦笑)先生か。先生は、無論、暗殺そのものに反対さ。
[#ここから3字下げ]
跫音人声など突如隣室の騒ぎが激しくなり、境の扉へぶつかる音がする。
[#ここで字下げ終わり]
[#改行天付き、折り返して1字下げ]
柳麗玉 (隣室に注意して不安げに起つ)安さん! 何でしょう――。
安重根 (熱して)正直のところ、僕は李剛さんを恨んでいる! 憎んでいる! いつだって、ああやって冷静に構えて反対しながら、その反対することによって僕を煽って、僕を使ってあいつを殺させようとしているんだ。解っている。ははは、わかっているよ。
[#ここから3字下げ]
隣室の騒擾が高まって、ドアが開かれそうになる。柳麗玉はドアへ走って背中で押し止めようとする。
[#ここで字下げ終わり]
[#改行天付き、折り返して1字下げ]
柳麗玉 安さん!
安重根 (無関心に)あの人にとって、僕という存在は一個の暗殺用凶器にすぎない。僕にはそれがよくわかる。(力なく)わかっていてどうすることもできないのが、僕は、この自分が、自分であって自分でないような――。(狂的に叫ぶ)あの人
前へ
次へ
全119ページ中72ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング