お炊事に使うんだから。
青年一 咽喉が乾いて焼けつきそうなんだ。
女 勝手に井戸へ行って飲んで来たらいいじゃないの。
青年一 ちっ! 面倒くせえや。わざわざ起って行くくらいなら我慢すらあ。
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傍らから青年二が女の甕を奪って飲みはじめる。女は争う。
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女 いけないったら、いけないよ、あらあら! こぼして――。
青年二 因業《いんごう》なこと言うなよ。新しいの汲んで来てやったら文句はないだろう。
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飲みつづける。青年一をはじめ、二三人集まって、甕を廻して飲む。笑声が起る。この間も安重根は続けている。
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安重根 (一段大声に)憤激のあまり、この事情を世界に発表しようとするくらいにまで覚悟しておりました。もともとわが韓国は四千年来武の国ではなく、文筆によって立ってきた国です。
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子供が出て来て安重根の前に進む。
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子供 (手を出して)小父ちゃん!
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