た五カ条の協約を締結しましたが、それはまったく先に宣言せられた韓国の独立を鞏固ならしむるという意に反しておりましたために、尠からず韓国上下の感情を害して、それに対し不服を唱えておりました。のみならず、千八百九十七年にいたりまして、またもや七カ条の協約というものが締結されましたが、これも先の五カ条と同様、韓国皇帝陛下が親ら玉璽《ぎょくじ》を※[#「金+今」、第3水準1−93−5]せられたのではなく、また韓国の総理大臣が同意したものでもない。じつに伊藤統監が強《し》いて圧迫をもって締結されたのであります。
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聴衆は無関心に、じっとしている。眠っている者もある。
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安重根 でありますから、この条約に対して、韓国人はことごとくこれを否認し、ついには憤激のあまり――。
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若い女が頭に水甕《みずがめ》を載せて出て来る。地面に胡座《あぐら》をかいている青年一が呼び停める。
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青年一 水か。待ってた。飲ましてくれ。
女 冗談じゃないよ。
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