然と起ったのを見て、鶏林八道から露領、満洲にかけての同志が安閑としていると思うか。大戦争だよ。これは、大戦争になる。
安重根 (哄笑)笑わせないでくれ。だから僕は、君が羨しいと言うんだ。
禹徳淳 (むっくり起き上って)何? じゃあ、安君、君は、同志が僕らを見殺しにするとでも考えているのか。
安重根 (話題を外らすように、劉東夏へ)十二時ごろに汽車の音がしたねえ。夢心地に聞いていた。
禹徳淳 (激しく)安君! 君は同志を信じないのか。
劉東夏 (戸口の椅子から)あれは貨物です。
安重根 汽車はあれきり通らないようだねえ。(禹徳淳へ笑って)三夾河まで行った方がよかったかな。
禹徳淳 しかし、蔡家溝は小さな駅だが、列車の行き違うところで、停車時間が長いというから降りたんじゃないか。
安重根 (劉東夏へ)列車往復の回数はわかっていますね。
禹徳淳 (吐き出すように)もちろんここは大事を決行するに便利なところじゃないよ。見慣れぬ人間がうろついていると、眼についてしょうがない。三人なんか張り込んでいる必要はないんだ。
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先刻の支那人ボウイを従えて駅長オグネフがはいって来る。

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