こにある、道具は。
禹徳淳 はい。道具は、預けてございます。
軍曹 どこに預けてあるのか。
禹徳淳 この町の親方のところに預けてございます。
軍曹 たしかにそうだな。嘘をつくと承知せんぞ。儲かるか。
禹徳淳 へ?
軍曹 飴屋は儲かるかと訊いているんだ。
[#ここから3字下げ]
軍曹は安重根を白眼みつけて、部下を纏めてさっさと出て行く。支那人のボウイが、その背ろ姿に顔をしかめながら扉《ドア》を閉めて続く。
[#ここで字下げ終わり]
[#改行天付き、折り返して1字下げ]
禹徳淳 笑わせやがらあ。あんでえ! 威張りくさりやがって。まるで日本人みてえな野郎だ。(劉東夏へ)驚いたろう。
安重根 (寝台に腰掛けて)僕は徳淳が羨しいよ。明日にも、世界中がびっくりするようなことをやろうというのに、とっさに上手に飴屋に成り済ましたりなんか――神経が太いぞ。
禹徳淳 (勢いよく寝台に滑り込んで、大声に)そうだ! いよいよおれたちがやっつけたとなると、騒ぎになるぜ。××戦争の戦端を切るんだ。愉快だなあ!
安重根 ××戦争? 不思議なことを言うねえ。誰が戦争をするんだ。
禹徳淳 何を言ってるんだ。おれたちが敢
前へ 次へ
全119ページ中104ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング