を解せずして死する人の生命《いのち》に、多くの價値あるを信ずる能はざる也。傷《いた》むべきは、生命を思はずして糧を思ひ、身體を憂へずして衣を憂ふる人のみ。彼は生れて其の爲すべきことを知らざる也。今や世事日に※[#「つつみがまえ+夕」、第3水準1−14−76]劇を加へて人は沈思に遑なし、然れども貧しき者よ、憂ふる勿れ。望みを失へるものよ、悲む勿れ。王國は常に爾の胸に在り、而して爾をして是の福音を解せしむるものは、美的生活是れ也。
[#地から2字上げ](明治三十四年八月)



底本:「日本現代文學全集8 齋藤緑雨・石橋忍月・高山樗牛・内田魯庵集」講談社
   1967(昭和42)年11月19日初版発行
   1980(昭和55)年5月26日増補改訂版第1刷発行
入力:三州生桑
校正:志田火路司、小林繁雄
2002年10月27日作成
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