ふるまひ》に御恨《おんうら》みを含みて時の亂《みだれ》を願はせ給ふ法住寺殿《ほふぢゆうじでん》の院《ゐん》と、三代の無念を呑みて只《ひた》すら時運の熟すを待てる源氏の殘黨のみ、内府《ないふ》が遠逝《ゑんせい》を喜べりとぞ聞えし。
士は己れを知れる者の爲に死せんことを願ふとかや。今こそ法體《ほつたい》なれ、ありし昔の瀧口が此君《このきみ》の御爲《おんため》ならばと誓ひしは天《あめ》が下に小松殿|只《たゞ》一人。父祖《ふそ》十代の御恩《ごおん》を集めて此君一人に報《かへ》し參らせばやと、風の旦《あした》、雪の夕《ゆふべ》、蛭卷《ひるまき》のつかの間《ま》も忘るゝ隙《ひま》もなかりしが、思ひもかけぬ世の波風《なみかぜ》に、身は嵯峨の奧に吹き寄せられて、二十年來の志《こゝろざし》も皆|空事《そらごと》となりにける。世に望みなき身ながらも、我れから好める斯かる身の上の君の思召《おぼしめし》の如何あらんと、折々《をり/\》思ひ出だされては流石《さすが》に心苦《こゝろぐる》しく、只々長き將來《ゆくすゑ》に覺束《おぼつか》なき機會《きくわい》を頼みしのみ。小松殿|逝去《せいきよ》と聞きては、それも協
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