姿|今《いま》いづこにある、菩提樹《ぼだいじゆ》の蔭《かげ》、明星《みやうじやう》額《ひたひ》を照《て》らす邊《ほとり》、耆闍窟《ぎしやくつ》の中《うち》、香烟《かうえん》肘《ひぢ》を繞《めぐ》るの前、昔の夢を空《あだ》と見て、猶ほ我ありしことを思へるや否。逢ひ見しとにはあらなくに、別れ路《ぢ》つらく覺ゆることの、我れながらb《いぶか》しさよ。思ひ胸に迫りて、吁々《あゝ》と吐《は》く太息《といき》に覺えず我れに還《かへ》りて首《かうべ》を擧《あ》ぐれば日は半《なかば》西山《せいざん》に入りて、峰の松影色黒み、落葉《おちば》を誘《さそ》ふ谷の嵐、夕ぐれ寒く身に浸《し》みて、ばら/\と顏打つものは露か時雨《しぐれ》か。

   第二十四

 其の年の秋の暮つかた、小松の内大臣重盛、豫《かね》ての所勞《しよらう》重《おも》らせ給ひ、御年四十三にて薨去あり。一門の人々、思顧の侍《さむらひ》は言ふも更なり、都も鄙もおしなべて、悼《いた》み惜《を》しまざるはなく、町家は商を休み、農夫は業を廢して哀號《あいがう》の聲《こゑ》到る處に充《み》ちぬ。入道相國《にふだうしやうこく》が非道《ひだう》の擧動《
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