る眼閃《ひら》めき、頽《くづ》せし膝立て直し屹《きつ》と衣《ころも》の襟を掻合《かきあ》はせぬ。思へば思へば、情なき人を恨み侘びて樣を變へんと思ひ決《さだ》めつゝ、餘所《よそ》ながら此世の告別に伺候せし時、世を捨つる我とも知り給はで、頼み置かれし維盛卿の御事、盛りと見えし世に衰へん世の末の事、愚なる我の思ひ料《はか》らん由もなければ少しも心に懸けざりしが、扨は斯からん後の今の事を仰せ置かれしよ。『少將は心弱き者、一朝事あらん時、妻子の愛に惹《ひ》かされて未練の最後に一門の恥を暴《さら》さんも測《はか》られず、時頼、たのむは其方一人』。幾度となく繰返されし御仰《おんおほせ》、六波羅上下の武士より、我れ一人を擇ばれし御心の、我は只々忝なさに前後をも辨《わきま》へざりしが、今の維盛卿の有樣、正に御遺言に適中せり。都を跡に西國へ落ち給ひしさへ口惜《くちを》しきに、屋島の浦に明日《あす》にも亡びん一門の人々を振り捨てて、武士は櫻木、散りての後の名をも惜しみ給はで、妻子の愛にめゝしくも茲まで迷ひ來られし御心根《おんこゝろね》、哀れは深からぬにはあらねども、平家の嫡流として未練の譏《そし》りは末代《
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