丹精を願いたい。その人はこれこれこうこうという話を聞くと、私もその作品はよく知ってかなり認めていた養老の作者ですから、あの人なら、もはや弟子入りをする必要もないかと思う。ただ、道具の鈍いのは難で、素人離れのしないのは欠点といえば欠点だが、事々《ことごと》しく私へ弟子入りするほどの必要もないかと思う。まあ友達のつもりで、聞きたいことがあれば聞きにお出《い》でになれば、知ってるだけはお話もしましょう。実は私も、少し弟子を作り過ぎて持て余しの形の処|故《ゆえ》、そういう軽い気持でなら、東京へお出での時にお尋ねになってもよろしいと答えましたが、大村氏は、それではきまりが附かぬから是非とおいいで、二度目には当人の山崎氏を伴《つ》れて見えられたから、前と同様のことをいって置きました。そして帰京すると、ほどなく山崎氏は道具箱をしょって出掛けて来られ、是非弟子にしてもらいたいというので、もはや否応《いやおう》をいう処でもないからそのまま弟子ということになったのです。
 しかし、前にも申した通り、衣食住のことなど自弁出来る人はなるべく自弁にするようにしてもらうのが、自弁出来ない人を世話するために私の都合
前へ 次へ
全17ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
高村 光雲 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング