幕末維新懐古談
不動の像が縁になったはなし
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)曰《いわ》く

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大変|惚《ほ》れ込み

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)こなし[#「こなし」に傍点]
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 そこでまた話がいろいろ転々しますが、平尾賛平氏が、どうしてこうも私のために厚い同情を注いで下すったかということについては、今までお話をしたばかりでは少し腑に落ちかねましょうが、これにはちょっと因縁のあることで、それをついでに話します。どういう訳か知らないが、私の一生には一つの仕事をするにも、いろいろ曰《いわ》くいんねんが附いて廻るのは不思議で、ただ、その事はその事と一口に話せないような仕儀であります。それは本当に妙です。

 或る晩、私は上野広小路を通りました。
 元は岡野今の風月《ふうげつ》の前のところへ来ると、古道具屋の夜店が並んでいます。ひょいと見ると、小さな厨子《ずし》に這入《はい》っている不動様が出ている。夜の十時頃で、もう店の仕舞い際《ぎわ》でしたが、カンテラの灯《ひ》の
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