幕末維新懐古談
栃の木で老猿を彫ったはなし
高村光雲
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)木彫《もくちょう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)年|老《と》った
−−
総領娘を亡くしたことはいかにも残念であったが、くよくよしている場合でもなく、一方には学校という勤めがあるので取りまぎれていました。
すこし話が前後へ転じますが、その年の春、農商務省で米国シカゴ博覧会に出品のことについて各技術家に製作を依嘱していました。私にも木彫《もくちょう》としての製作を一つ頼むということであった。
この出品については、政府が奨励をしました。しかし政府出品ではなく、出品は個人出品ですが、奨励策として、個人の製作費を補助したのであります。たとえば私が八百円のものをこしらえて出すとすると、その価格の半額を政府で補助し、もしそれが売約になればその代金も補助費もすべて作家の方へくれるので、その上出品は作家の名でするのでありますから、作家側に取っては大変に都合の好いことでありました。当時はまだ政府当局がこれ位の程度に補助していたものであった。しかしこの時限り
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