補助という事はやみましたし右のような都合で私も何か製作しなければならない。何を作ろうかと考えましたが、その以前から栃《とち》の木を使って何かこしらえて見たいという考えを持っていました。この栃の木という材は、材質が真白で、木理《もくめ》に銀光りがチラチラあって純色の肌がすこぶる美しいので、かつてこの材を用いて鸚鵡《おうむ》を作り、宮内省の御用品になったことがある。それで今度も栃の木の良材を探し、純色で銀色の光りのある斑《ふ》を利用して年|老《と》った白猿をこしらえて見ようと思いました。
その頃は私は専ら動物に凝っていた時代で、いろいろ動物研究をやっていた結果こういう作を考えたのであった。
そこで、丸太河岸の材木屋を尋ねて見ると、栃の木の良材はあるにはあるが、何分にも出し場が悪いので、買い入れを躊躇《ちゅうちょ》しているのですが、材木はすこぶる立派で、直径《さしわたし》六尺から七尺位のものがある。ただ、困るのは運賃が掛かるのと、日数がかかることで、商売になりませんから手を出さずにいますという話で、その場所をも教えてくれました。
それで私はこの事を後藤貞行君に話すと、それは一つ直接当
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