幕末維新懐古談
その他のことなど
高村光雲
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)床置《とこお》き
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さて、楠公像は、この原型を同じ美術学校の鋳金科教授岡崎雪声氏が鋳造致して住友家へ引き渡したことでありました。木型はその後大阪の博覧場というのに飾ってありましたが、今日は何処にあることか。確か、白い木地は銅色に色をつけてあったと記憶します。
またその後に至って、右の木型の形を縮めて、床置《とこお》き位な小さい鋳物が四つか五つ出来ました(住友家の依頼であった)。これは山田鬼斎氏が大作に依《よ》って小型を彫りましたのです。その小型が今日美術学校の文庫に保存されてあります。これを元の原型と間違えている人もあるから、これもついでに間違わないように断わって置きます。事実を確かにして置きませんと、現にまだその製作主任をした私が生きている間に、早くもその作者の名さえも間違うようなわけでありますから、確実なことを記録に止《とど》めて置くは必要の事と思います。
楠公像の馬場先門外に建ったのは、ずっと後のことで、その建設の場所なども、最初は学校の方で選定することになっ
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