って見ますと、驚いたことには大仏の骨はびく[#「びく」に傍点]ともせず立派にしゃんとして立っております。しかし無残にも漆喰は残らず落ちて、衣物《きもの》はすっかり剥《は》がれておりました。私は暫く立って見ていましたが、どうも如何《いかん》ともしがたい。ただ、骨だけがこう頑丈《がんじょう》にびくともせずに残っただけでも感心。左右前後から丸太が突っ張り合って自然にテコでも動かぬような丈夫なものになったと見えます。それに漆喰が剥《と》れて、すべて丸身をもった形で、風の辷《すべ》りがよく、当りが強くなかったためでもありましょうが、この大仏が出来てから間もなく、直ぐ向うの通りに竹葉館という興業ものの常設館が建って、なかなか立派に見えましたが、それが、一たまりもなく押し潰《つぶ》され、吹き飛ばされているから見ますと、大仏は骨だけでもシャンとしていた所は案外だと思って帰ったことでありました。
この大嵐《おおあらし》は佐竹の原の中のすべてのものを散々な目に逢わせました。
葭簀張《よしずば》りの小屋など影も形もなくなりました。それがために佐竹の原はたちまちにまた衰微《さび》れてしまって、これから一
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