く、人を呼ぶのに、あんなことでは余り智慧《ちえ》がない。何か一つアッといわせるようなものを拵えて見たいもんだね」
「高村さん、何か面白い思い附きはありませんか」
というような話になりました。
「さようさ……これといって面白い思い附きもありませんが、何か一つあってもよさそうですね。原の中へ拵えるものとなると、高値なものではいけないが、といって小《ち》っぽけな見てくれのないものでは、なおさらいけない……どうでしょう。一つ大きな大仏さんでも拵えては……」
笑談《じょうだん》半分に私はいい出しました。皆が妙な顔をして私の顔を見ているのは、一体、大仏を拵えてどうするのかという顔附きです。で、私は勢い大仏の趣向を説明して見ねばなりません。
「大きな大仏を拵えるというのは、大仏を作って見物を胎内へ入れる趣向なんです。どのみち何をやるにしても小屋を拵えなくてはならないが、その小屋を大仏の形で拵えて、大仏を招《まね》ぎに使うというのが思い附きなんです。大仏の姿が屋根にも囲《かこい》にもなるが、内側では胎内|潜《くぐ》りの仕掛けにして膝《ひざ》の方から登って行くと、左右の脇《わき》の下が瓦燈口《かとうぐ
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