いって別にこれといって落ち附いて、深く見物しようなどというものはない。いわば縁日の本尊のないようなもので、何んというきまり[#「きまり」に傍点]もなく、ただ一時の客を呼んでドンチャンと騒いでいました。
私は、西町の例の往来の見える仕事場で仕事をしていると、ぞろぞろ前を人が通る。これが皆佐竹の原へ行くのだということ。花時《はなどき》に上野の方へ人出の多いは不思議がないが、昼でも追《お》い剥《は》ぎの出そうな佐竹の原へこんなに人出があるとは妙な時節になったものだと思って仕事をしていたことであった。
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店
1995(平成7)年1月17日第1刷発行
底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房
1929(昭和4)年1月刊
入力:網迫、土屋隆
校正:noriko saito
2007年2月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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