そういうことに役に立てば甚《はなは》だ満足ですといって、早速書生さんに苞《つと》を拵えさせ、一匹ずつ入れて、両方に縄《なわ》を附けて、提《さ》げて持てるようにしてくれました。鶏は苞から頸《くび》だけ出して、びっくりした顔をしている。私は素直に植木氏の好意を謝し頂戴《ちょうだい》して帰りました。
狭いけれども宅には庭がありますから、右の矮鶏を、掩《ふ》せ籠《かご》を買って来て、庭へ出して、半月ばかり飼って置きました。
そうすると、色々な人が来て庭にいる植木さんから買って来た鶏を見て
「あれは何んの鳥ですか」
という塩梅《あんばい》。
「矮鶏ですよ」
といっても、どうも腑《ふ》に落ちないような顔をして
「へへえ、矮鶏ですか。……」といって、チャボにしちゃ変だなあといいそうである。私は、その説明をするために植木さんの受け売りをするのだが、どうも誰も承知しません。中にはチャボ通などがあって、
「どうも、チャボとは受け取れませんね。元来、チャボは占城国《チャンパこく》とかから渡ったもので舶来種だが、この鶏は舶来なんですかね。鶏の中でも極めて小さいもので、脛《あし》の高さがわずか一、二寸、そ
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