になりました。
 葉茶屋の方のは一つ出来ましたので、厚く礼をいって還《かえ》しました。先方もお役に立って満足とよろこびました。
「種」を手本に毎日|鑿《のみ》の数が進んで行くにつけて、いかにも御尤《ごもっとも》と感じて、彫る上にも気乗りがして来ました。それで、つくづく私は思うことには、物の形を表わすものは、世間を広く見てモデルも撰ばなければならない。疎《おろそ》かにしないまでも、狭くては、充分でないものをも結構と心得て飛んだ手落ちをするようなことを生ずる。これは心得べきことだと感じたことであった。



底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店
   1995(平成7)年1月17日第1刷発行
底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房
   1929(昭和4)年1月刊
入力:網迫、土屋隆
校正:noriko saito
2007年1月8日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全8ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
高村 光雲 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング