るもの、葉は三葉で一葉を為《な》し、春分旧根から芽を出し、夏になって一茎に一花を開く。花の大きさは二寸余で、六弁のものも八弁のもある。色は碧《あお》か白、中心に小さな紫弁が簇《むら》がってちょっと小菊の花に似ているもの)、それが終ると、今度は小鳥に唐草を一組仰せつかった。この一組は二枚の処も四枚の所もあって、なかなか大きく手の籠《こ》んだもの。……これらはいずれも首尾よく納まりました。それから暫《しばら》くすると、今度は御学問所の欄間で蝙蝠《こうもり》を彫工会の方へ御命じになって、大勢で一つずつ彫れという命令。つまり合作であります。私は白蝠《はくふく》を一つ彫りました。
これらの彫刻は掛かりの方から下絵が出ているので、そうむずかしく意匠することも入らず、得手《えて》々々に彫刻して雲形の透かしに配置したものです。何しろ宮中のお仕事ですから謹んで落ち度のないように心掛けたことでありました。
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店
1995(平成7)年1月17日第1刷発行
底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房
1929(昭和4)年1月刊
入力:網迫、土屋隆
校正:no
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