幕末維新懐古談
大隈綾子刀自の思い出
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)後戻《あともど》り

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大隈《おおくま》未亡人|綾子刀自《あやことじ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)あやかり[#「あやかり」に傍点]たい
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 話がずっと後戻《あともど》りしますが、今日は少し別のはなしをしようかと思いますが、どうですか。
 ……では、そのはなしをすることにしましょう。

 実は、先日来、大隈《おおくま》未亡人|綾子刀自《あやことじ》が御重体であると新聞紙上で承り、昔、お見知りの人のことで、蔭ながらお案じしていた次第であったが、今朝(大正十二年四月二十九日)の新聞を見ると、お歿《なく》なりになったそうで、まことに御愁傷のことである。

 それにつけて、この頃、綾子刀自の素性《すじょう》のことについて、いろいろ噂《うわさ》を聞いたり、また新聞などで見たりしますと、元、料理屋の女中であったなど、誰々の妾《めかけ》であったなどというようなことが伝えられているが、そういうことは皆間違
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