ていた所でありました。
で、右の会名の問題となって「牙《げ》」の文字を入れる入れないとなって、そうして、入れるが当然という話になると、私は一応自分の考えを述べる必要を感じたのであった。
「私の考えを申しますが、「牙《げ》」を表わすことになると「木《き》」をも表わしてもらいたいと私は思います」
こういう意味で述べました。
つまり、私の考えは、今日の審議する所は、単に牙彫と限られた会の名を附ける主意のものでなくして、日本の彫刻家の集合でもっと広義な意味のものであると思うのであったわけであります。
すると、或る人は、
「なるほど、お考えは一応|御尤《ごもっとも》と存じますが、しかし木の方は幾人ありますか」
という質問をされました。
「幾人あるかとお質問《たず》ねに対しては、只今の所差し当り私一人で、弟子に林美雲《はやしびうん》というものがある位のもので、何んともお答えのしようもありませんが、しかし、今日、私一人であっても、何時《いつ》までも一人や二人という訳はありますまい。他日、幾人に殖《ふ》えて来るかも分りません。木彫りの方がもし殖えた場合「牙」の字を表わした会名では如何《いかが》
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