形となって縁起を取るのであるが、その曲げようにも、老人の語る処によると、やはり手心《てごころ》があって、糸などを使って曲げを吊《つ》っていたり、厚ぼったかったりするのは拙手《へた》なので、糸なしで薄くしまっ[#「しまっ」に傍点]て出来たのが旨《うま》いのだなどなかなかこんなことでも老人は凝ってやったものです。
一本一本出来て数が積り、百本二百本というようになると、恐ろしく量張《かさば》って場所ふさげなものです。しかしまた数が積って狭い室一杯に出来|揃《そろ》った所は賑《にぎ》やかで悪くもないものです。そのいろいろの飾り物の中で、例のおかめの面、大根《だいこん》じめ、積み俵は三河島が本場(百姓が内職にしている)だから、そっちから仕入れる。熊手の真ん中にまず大根締めを取り附け、その上に俵を三俵または五俵真ん中に積み、その後に帆の附いた帆掛け船の形が出来て、そのまわりにいろいろな宝が積み込んであるように見せて、竹の串《くし》に刺して留めてある、ちょうど大根締めと俵とに刺さるようになるのです。そうして、金箔がぴかぴかして、帳面には大福帳とか大宝恵帳《だいほうえちょう》なぞと縁喜《えんぎ》よ
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