幕末維新懐古談
蘆の葉のおもちゃのはなし
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)何処《どこ》まで

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)六|阿弥陀《あみだ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)おもちゃ[#「おもちゃ」に傍点]
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 暫く話を途切らしたんで、少し調子がおかしい……何処《どこ》まで話したっけ……さよう……この前の話の処でまず一段落附いたことになっていた。これからは、ずっと、私の仕事が社会的に働きかけて行こうという順序になるので、私の境遇――生活状態もしたがってまた実際的で複雑になって行くことになりますが、話の手順はかえって秩序よく進んで行くことと思う。

 ところで、今日は暫くぶりであったから、無駄話を一つ二つして、それから改めてやることにしましょう。この話は堀田原の家を師匠が売ったについて、寿町へ立ち退《の》いた時代で、明治十二年の頃、父兼松が六十一、二、私が二十六、七という時、随分他愛もない話であるが、私の記憶には印象の深いものとなっている。……東京の年中行事の一つである鳥の市《いち》で熊
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