幕末維新懐古談
脂土や石膏に心を惹かれたはなし
高村光雲
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)虎《とら》の門際《もんぎわ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)幾日|経《た》っても
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ちょうど、その時分、虎《とら》の門際《もんぎわ》の辰《たつ》ノ口《くち》に工部省で建てた工部学校というものが出来ました。噂《うわさ》に聞くと、此校《ここ》では西洋人を教師に傭《やと》って、絵や彫刻を修業しているのだということ、絵は油絵であり、彫刻は西洋彫刻をやっているのだという評判……そういう話を聞くと、私はそれを見たくて仕方がないが、しかし見るわけにも行かぬ。生徒には藤田文三氏、長沼守敬《ながぬまもりよし》氏、大熊氏廣《おおくまうじひろ》氏などいう人たちが入校《はい》っているようであるが、自分は純然たる仏師のこととて、まるで世界が違う。其《その》日々々の手間《てま》を取って一家の生計《くらし》を立てて行くその仕事の余暇を見つけては、今申す通り実物を教師にして写生することを心掛けているのであるから、なかなか、そういう学校へ入学してその人々とともに研究修業
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