応《こた》えることも出来ますが、私たちのように、まだ一向に基礎の確定しておらぬものは、生活するということからも考えねばならぬ。仏師という職業がこのまま職業として世の中に立って行けるものか。よしまた行けるとして、従来通りの仏師でやって行って好《い》いものか、その辺のことについて考えて見るに、どうも不安でなりません。自分の職業とする仏師の仕事その物にも不安であると同時に、仏師の仕事によって糊口《ここう》して行けるか否やについても不安である。いろいろ急激に社会の事物の変遷する時代は、何事によらず、その社会に生きて行く人の上には不安な思いが襲い掛かって参るもので、私も大いに熟慮を要しなくてはならないと思ったことがあります。
されば、段々と仏師への注文が少なくなって来る。師匠東雲師の店においても従前とはよほど仕事の数が減って参りまして、この先どうなることか心配をしている……が、ここにまた時勢の変遷につれて、いろいろな事が起って来る中に、横浜貿易というものが恐ろしい勢いで開けて来ました。それで、その貿易品が一般に流行する所から、貿易品的な置き物のようなものの注文が大分師匠の許《もと》に来るように
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