幕末維新懐古談
本所五ツ目の羅漢寺のこと
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)お布令《ふれ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)天恩山|羅漢寺《らかんじ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)より[#「より」に傍点]
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 この時代のことで、おもしろい話がある。これは神仏混淆の例証ではありませんが、やはり神仏区別のお布令《ふれ》からして仏様側が手酷《てきび》しくやられた余波から起った事柄であります。
 本所《ほんじょ》の五ツ目に天恩山|羅漢寺《らかんじ》というお寺がありました。その地内《じない》に蠑螺堂《さざえどう》という有名な御堂がありました。形は細く高い堂で、ちょうど蠑螺の穀《から》のようにぐるぐると廻って昇り降りが出来るような仕掛けに出来ており、三層位になっていて大層|能《よ》く出来た堂であった。もし今日これが残っておれば建築家の参考となったであろう。堂の中には百観音が祭ってあった。上《のぼ》り下《くだ》りに五十体ずつ並んで、それはまことに美事《みごと》なもので、当寺の五百羅漢と並んで有名であり
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