三人でまずやることになったが、無論、亀岡氏は翌朝早々見えられ、自分の言の適中したことを大いに悲しみ、懇《ねんごろ》に仏の前に礼拝をされて後、私を他へ招《よ》んで申すには、
「幸吉さん、今日の場合、何事も遠慮をしてはいかんよ。それでは物が運ばん。この際は充分にお前自身の思う通りやってもらわんければ埒《らち》が明かん。それで、奥の人たちにも私が念のためにそのことを断わって置いたから、遠慮は無用にして、ドシドシこの際のことは片附けて下さい。これは私が特に師匠の知己としてお前にお願いする」
 そう亀岡氏はキッパリいわれました。
 そして金銭《かね》を五十円私に渡し、
「これは、葬式費用万事の事に滞りないようにと思って私が立て代えて置くのであるから、これで思うようにやって下さい。一々奥と金銭のことで相談も入るまいから」
との事であった。そこで私は右の五十円を亀岡氏の番頭さんに渡し会計を頼んで金銭の入用の時はそれから支出してもらうことにして、その他|金銭《かね》の出入りはこの人に一任しました。万事は高橋氏と番頭さん私と三人で相談して決めました。
 今日から考えて当時のことを思うと、まことに私に取っ
前へ 次へ
全3ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
高村 光雲 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング