幕末維新懐古談
東雲師没後の事など
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)丑歳《うしどし》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)その他|金銭《かね》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)とむらい[#「とむらい」に傍点]
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 さて、差し当っての責任として、私が主として師匠東雲師の葬送のことを取り計らわねばならぬ次第となったのであります。というのは、師匠の息子は、丑歳《うしどし》の時に出来た子供であって、それが当年十四、五になっているが、これはまだ当面に立つことは出来ぬ。政吉は一種の変人で、何か人と応対などすべきことでもあると、隠れていなくなるというような妙な気風の人。後《あと》に私の弟弟子が二人あっても、これは私にたよるばかり、奥は女の人たちばかり、どうしても私が以前からの行き掛かり上、全責任を負って立たなければならぬことになった。また私も師匠のためにはそう致すが当然とも思いました。
 ところで、相談相手としては亀岡の番頭さん、それに高橋定次郎氏は私よりも二つも年長で師匠とは生前深い関係のあった人。この
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