幕末維新懐古談
店初まっての大作をしたはなし
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)中《うち》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)京橋|築地《つきじ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)大たぶさ[#「たぶさ」に傍点]
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 かれこれしている中《うち》に私は病気になった。
 医師に掛かると、傷寒《しょうかん》の軽いのだということだったが、今日でいえば腸《ちょう》チブスであった。お医師《いしゃ》は漢法で柳橋《やなぎばし》の古川という上手な人でした。前後二月半ほども床に就《つ》いていました。
 病気が癒《なお》るとまた仕事に取り掛かる。師匠の家の仕事も、博覧会の影響なども多少あって、注文も絶えず後から後からとあるという風で、まず繁昌《はんじょう》の方であった。私が専《もっぱ》ら師匠の代作をしていることなども、知る人は知っておって、私を認めている人なども自然に多くなるような風でありましたが、私としては何処《どこ》までも師匠の蔭にいるものであって、よし、多少手柄があったとしても、そういうことは虚心でいるように心
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