ます。有難う」
とすこぶる意に適《かな》った容子《ようす》で帰りました。
 そこで、いよいよ本当に製作に取り掛かることになったのですが、何しろ、私も、生まれて初めての大作のことで、かなり苦心をしました。
 かくて、十一年の十一月頃、全く製作を終り、店に飾り、先方の検分を終って唐子の彫刻は引き取られて行きました。この大作は私の修業としてはなかなかためになりましたと同時に、また一面には、こうした作をやったことなどから次第に外国向きの注文を多く師匠の店で引き受ける素地を作ったことになりました。
 この時代から、そろそろ日本の従来の仏師の店において外国貿易品的傾向の製作が多くなって行く一転機の時代に這入《はい》って来たのでありました。



底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店
   1995(平成7)年1月17日第1刷発行
底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房
   1929(昭和4)年1月刊
入力:網迫、土屋隆
校正:noriko saito
2006年9月8日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.j
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