幕末維新懐古談
堀田原へ引っ越した頃のはなし
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)彼《か》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)結婚後|暫《しばら》く
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 私は結婚後|暫《しばら》く親の家へ帰っていた。ちょうどそれを境にして彼《か》の金谷おきせさんは穀屋の店を畳んで堀田原《ほったわら》の家に世帯を引き取りました。
 この家は私が戸主で、養母が住んでいるけれども、それはほんの名義だけのことであるから、万事は師匠の意見、またお悦さんおきせさんなど姉妹《きょうだい》の都合の好いままに任せ、私は自分の家なる前回|度々《たびたび》申した彼の源空寺門前の親たちの家にいることになりました。
 もうこの頃では北清島町という町の名前など附いていた頃であった。

 師匠東雲師の住居は駒形にあったが、その時分蔵前の北元町《きたもとまち》四番地へ転宅することになった。
 この家は旧|札差《ふださし》の作《こしら》えた家で、間口が四|間《けん》に二間半の袖蔵《そでぐら》が付いており、奥行は十間、総二階という建物で、木口《きぐち》もよろしく立派な建物で
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