幕末維新懐古談
家内を貰った頃のはなし
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)大分《だいぶ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)性情|伎倆《ぎりょう》ともに

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)むげ[#「むげ」に傍点]に
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 私の年季が明けると同時に、師匠東雲師はまず私の配偶者のことについて心配をしておられました。もっとも年の明ける前から心掛けておったようです。これは親たちも感じていたことでありましょう。母もその頃は大分《だいぶ》弱っておりましたので、相当なものがあれば、早く身を固める方がよいと思っておったことと思われます。
 しかし、この方のことは私は至って暢気《のんき》で、能《よ》く考えて見るほどの気もありませんでした。というは、両親が揃《そろ》っていて、その上に家内《かない》を持つとなると、責任が三人になる。その上四人五人になることと思い、只今の自分の境遇として、経済上、それだけの責任を負うことは大分荷が重い。で、今の所、もう三、四年も働いて、いささか目鼻が明き、技倆《ぎりょう》も今一段進歩した
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