幕末維新懐古談
彫刻修行のはなし
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)稽古《けいこ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)十二|神将《じんしょう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)制※[#「咤−宀」、第3水準1−14−85]迦童子《せいたかどうじ》
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 早速彫らされることになる――
 この話はしにくい。が、まず大体を話すとすると、最初は「割り物」というものを稽古《けいこ》する。これはいろいろの紋様を平面の板に彫るので工字紋《こうじもん》、麻の葉、七宝、雷紋《らいもん》のような模様を割り出して彫って行く。これは道具を切らすまでの手続き。それが満足に出来るようになると、今度は大黒《だいこく》の顔です。これがなかなか難儀であって、木の先へ大黒天の顔を彫って行くのであるが、円満福徳であるべきはずの面相が馬鹿に貧相になったり、笑ったようにと思ってやると、かえって泣いたような顔になる。なかなか旨《うま》く行かない。繰り返し繰り返し、
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