旨く行くまで彫らされる。彫るものの身になると、真《まこと》に辛《つら》い。肥えさせればぼてるし、瘠《や》せさせれば貧弱になる。思うようには到底《とても》ならないのを、根気よく毎日毎晩コツコツとやっている中《うち》に、どうやら、おしまいには大黒様らしいものが出来て来ます。
 と、今度は蛭子《えびす》様――これは前に大黒の稽古が積んで経験があるから、いくらか形もつく。大黒が十のものなら五つで旨く行って、まずそれでお清書《せいしょ》は上がるのです。
 すると、三番目の稽古に掛かるのが不動様の三尊である。不動様は今日でもそうであるが、その頃は、一層|成田《なりた》の不動様が盛んであったもので、不動の信者が多い所から自然不動様が流行《はや》っている。不動様はまず矜羯羅童子《こんがらどうじ》から始めます。これは立像《りゅうぞう》で、手に蓮《はちす》を持っている。次が制※[#「咤−宀」、第3水準1−14−85]迦童子《せいたかどうじ》、岩に腰を掛け、片脚《かたあし》を揚げ、片脚を下げ、捻《ねじ》り棒を持っている。この二体が出来て来ると、次は本体の不動明王を彫るのです。
 次は三体に対する岩を彫る。次
前へ 次へ
全9ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
高村 光雲 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング