粉地《きりこじ》とあり、いずれも研《と》いで下地《したじ》を仕上げるもの。上塗《うわぬ》りは何度も塗って研磨して仕上げるものです。泥地は胡粉《ごふん》と膠《にかわ》で下地を仕上げ、漆で塗ったまま仕上げ、研がないのです。泥地でも上物《じょうもの》は中塗りをします。
箔にも種類があって、一つの製品を金にするにも金箔を使うのと、同じ金であっても、金粉を蒔《ま》いて金にするのと二色《ふたいろ》ある。
箔についても、濃色《こいろ》があり、色吉《いろよし》がある。中色《なかいろ》、青箔、常色《つねいろ》等がある。その濃色は金の位でいうとヤキ金《きん》に当る。色吉が小判で、十八金位に当る。それから段々十二金、九金というように銀の割が余計になって来る。
箔の大きさは普通三寸三分、三寸七分、四寸である。厚さにも二枚|掛《が》け、三枚掛けと色々ある。これは私が仏師になった時代のことだが、今日《こんにち》ではいろいろの大きさの箔が出来ていて調法になっています。
彩色にも、いろいろあります。極彩色、生け彩色、俗にいう桐油《とうゆ》彩色など。その彩色に属するもので、細金《ほそがね》というのがある。これは細金で模様を置くのである。描《か》くとはいえない。それから金泥で細金の如く模様を描くのがあります。
極彩色はやっぱり絵画と同じ行き方で、胡粉で白地に模様を置き上げ、金にする所は金にして彩色にかかる。生け彩色は一旦《いったん》塗って金箔を置いて、見られるようになった時、牡丹《ぼたん》なら牡丹の色をさす[#「さす」に傍点]。葉は葉で彩《いろど》り、金を生かして、彩色をよいほどに配して行く。これはなかなか好い工夫のものです。
桐油彩色は、雨にぬれても脱落《はげ》ないように、密陀油《みつだゆ》に色を割って、赤、青と胡粉を割ってやるのです。余り冴《さ》えないものだが、外廻りの雨の掛かる所、殿堂なら外廓に用いられる。
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店
1995(平成7)年1月17日第1刷発行
1997(平成9)年5月15日第6刷発行
底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房
1929(昭和4)年1月刊
入力:山田芳美
校正:土屋隆
2006年1月15日作成
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