幕末維新懐古談
高村東雲の生い立ち
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)法眼鳳雲《ほうげんほううん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)仏師高橋|法眼鳳雲《ほうげんほううん》
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 そこで、これから師東雲先生の生い立ちを話します。
 東雲師は元奥村藤次郎といった人で、前述の通り下谷北清島長(源空寺門前)の生まれである。その師匠が当時江戸で一、二を争うところの仏師高橋|法眼鳳雲《ほうげんほううん》という有名な人でありますが、この人のことは別に改めて話すことにする。
 東雲師の姓の奥村氏が後に至って高村となり、藤次郎が東雲と号したことについては所以《いわれ》のあることで、この東雲という人は非常な師匠思い……したがって正直|律義《りちぎ》であり、製作にかけてもなかなか優《すぐ》れている所からして、師匠鳳雲の気にも入っておりました。お決まりの十一年の年季も立派に勤め上げ、さて、これから東雲は師匠と別れて、別に一人前として世に立って行くことになりましたから、その別るるに際し、日頃から特に師匠思いの東雲師のこと故、謹《つつし》んで申し出《
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