幕末維新懐古談
私の父祖のはなし
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)概略《あらまし》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)中島|重左《じゅうざ》エ門《もん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)そのおもちゃ[#「おもちゃ」に傍点]というのは
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 まず、いろいろの話をする前に、前提として私の父祖のこと、つまり、私の家のことを概略《あらまし》話します。
 私の父は中島兼松《なかじまかねまつ》といいました。その三代前は因州侯の藩中で中島|重左《じゅうざ》エ門《もん》と名乗った男。悴《せがれ》に同苗《どうみょう》長兵衛《ちょうべえ》というものがあって、これが先代からの遺伝と申すか、大層|美事《みごと》な髯《ひげ》をもっておった人物であったから、世間から「髯の長兵衛」と綽名《あだな》されていたという。その長兵衛の子の中島|富五郎《とみごろう》になって私《わたし》の家は全くの町人《ちょうにん》となりました。

 富五郎の子が兼松、これが私の父であります。父の家は随分と貧乏でありました。これは父が道楽をしたためと
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