霧の不二、月の不二
――明治三十六年八月七日御殿場口にて観察――
小島烏水

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)瞰《み》る

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)柴野栗山先生|讚嘆《さんたん》して

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「肄」の「聿」に代えて「欠」、第3水準1−86−31]苳《ふき》

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)悠々《いう/\》と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 不二より瞰《み》るに、眼下に飜展《ほんてん》せられたる凸版地図《レリイヴオ・マツプ》の如き平原の中《うち》白面の甲府を匝《め》ぐりて、毛ばだちたる皺《しわ》の波を畳《たゝ》み、その波頭に鋭峻《えいしゆん》の尖《とが》りを起《た》てたるは、是《こ》れ言ふまでもなく金峰山、駒ヶ嶽、八ヶ嶽等の大嶽にして、高度いづれも一万尺に迫り、必ずしも我不二に下らざるが如し、不二は自らその高さを意識せざる謙徳の大君なり、裾
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