槍ヶ岳第三回登山
小島烏水
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)手繰《たぐ》られて
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)青|※[#「金+嘯のつくり」、第3水準1−93−39]《さ》びた
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「風+昜」、第3水準1−94−7]
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雨で閉じこめられた、赤沢小舎の一夜が明ける。前の日、常念岳から二の股を下りて、私たちの一行より早く、この小舎に着いていられた冠君は、今朝も早く仕度を済まされ、「お先へ」と言って、人夫どもを連れて出て行かれる、「若い衆天幕取れやい」と嘉門次の号令がかかる、天幕を組み立てた糸がスルスルと手繰《たぐ》られて、雫のポタポタする重い油紙が、跪《ひざ》まずくように岩盤の上に折り重なる、飯を炊《かし》いだあとの煙が、赤樺の梢を絡んで、心臓形に尖った滑らかな青葉を舐めて、空へ※[#「風+昜」、第3水準1−94−7]《あが》って行く、その消えぎえの烟の中から、人夫が一人ずつ、荷をしょっては
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