雪の白峰
小島烏水

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)彷徨《さまよ》い

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)山の三角的|天辺《てっぺん》が

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)腹が※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《むし》られ
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 アルプスに Alpine Glow(山の栄光)という名詞がある、沈む日が山の陰へ落ちて、眼にも見えなくなり、谷の隅々隈々に幻の光が、夢のように彷徨《さまよ》い、また消えようとするとき、二、三分の間、雪の高嶺に、鮮やかな光が這《は》って、山の三角的|天辺《てっぺん》が火で洗うように耀《かがや》く、山は自然の心臓から滴《た》れたかと思う純鮮血色で一杯に染まる、まことに山の光栄は落日である、さればラスキンも『近世画家論』第二巻に、渚へ寄する泡沫《ほうまつ》と、アルプス山頂の雪とは、海と山とを描いて、死活の岐《わか》れるところだというような意味で書いてある、落日より億万の光線を吸収して、その一本一本に
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