上高地風景保護論
小島烏水

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)将《は》た敬虔なる

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)標高三千百九十二|米突《メートル》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、底本のページと行数)
(例)眼を※[#「※」は目へんに「爭」、374−9]《みは》らせるように
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 このたび、松本市に開かれた信濃山岳研究会に、来会したのを、機会として、私は松本市から遠くない、上高地温泉のために、温泉のためではない、日本アルプス登山の中心点のために、将《は》た敬虔なる順礼の心を以て、日本アルプスという厳粛なる自然の大伽藍に詣でる人々のために、同地にある美しい森林の濫伐に関して、公開状を提出する。
 信州の山岳の中でも、御嶽や駒ヶ岳などは、古くから多くの登山者を有していたが、宗教が権威を失った今日では、新しい登山家は、種々の理由からして、日本アルプスの中でも、殊に飛騨山脈を選び、飛騨山脈の中でも、最高点の槍ヶ岳や穂高岳の特色ある火成岩の大塊は特に多くの人々を引きつけているらしく思われる。
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