菜の花
小島烏水
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)潰《つぶ》されて
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)やにこく[#「やにこく」に傍点]ても
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市街に住まっているものの不平は、郊外がドシドシ潰《つぶ》されて、人家や製造場などが建つことである、建つのは構わぬが、ユトリだとか、懐《くつ》ろぎだとかいう気分が、亡《な》くなって、堪まらないほど窮屈になる、たとえやにこく[#「やにこく」に傍点]ても、隙間もなく押し寄せた家並びを見ていると、時々気が詰まる、もし人家の傍に、一寸《ちょっと》した畠でもあれば、それが如何《いか》に些細なものであっても、何だか緩和されるような気になる、そうして庭園のように、他所《よそ》行きの花卉《かき》だの、「見てくれ」の装飾だのがしてないところに、又しようとも思わない無造作のところに、思いさま両手を伸ばして欠《あく》びでもするような気持になれる。
少なくとも、市街は接近した、もしくは市街を前景とした畠は、野菜を作って、食膳に供給するという実用的の意味に於てよりも、人間と人間との間に踏み固められない、柔
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