らずに、だまって愛の涙で抱擁してくれる人もほしいのです。
[#ここから2字下げ]
この寒さ不孝者|奴《め》が居《お》りどころ
[#ここで字下げ終わり]
といった、愛の涙[#「愛の涙」は太字]もほしいのです。
[#ここから2字下げ]
是れきりでもうないぞよと母は出し
[#ここで字下げ終わり]
小言をいいつつも、やはり、わが子かわいさに、財布《へそくり》の底をはたいて[#「はたいて」に傍点]、出してくれる、母の慈愛もほしいのです。不孝者奴と罵《ののし》りつつ、もうないぞよと意見しつつ、なおもわが子をば、慈愛の懐《ふところ》に抱いてくれる親の情けは、否定しつつ、肯定しているのです。智慧の涙[#「智慧の涙」に傍点]と、慈悲の涙[#「慈悲の涙」に傍点]、たといその表現の相《すがた》においては異なっておろうとも、その心持には、なんの違いもないのです。
亡くなった老父のこと[#「亡くなった老父のこと」は太字] いまから二十数年前に亡《な》くなりました私の父は、こんな歌を私に残して逝《ゆ》きました。
[#ここから2字下げ]
父は照り母は涙の露となりおなじ慧《めぐみ》にそだつ撫子《なでし
前へ
次へ
全262ページ中73ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
高神 覚昇 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング