一字を十分に噛《か》みしめ、味わい、再建日本のための貴い資糧とせねばならぬと存じます。
ところで人生を旅路と考え、弥次郎兵衛、喜多八の膝栗毛を思い、東海道五十三次の昔の旅[#「五十三次の昔の旅」は太字]を偲《しの》ぶとき、私どもは、ここにあの善財童子の求道譚《くどうものがたり》を思い起こすのです。善財童子は文殊菩薩《もんじゅぼさつ》の指南によって、南方はるかに五十三の善智識を尋ね、ついに法界に証入して、まさしく悟れる仏陀《ほとけ》になったのですが、この物語は、かの『華厳経《けごんきょう》』(第一講をみよ)のほとんど大半を占めている有名な話です。人生の旅路を、菩薩の修業に託して説いてくれた古《いにし》えの聖者の心持が、尊くありがたく感ぜられるのです。おそらく、東海道の宿場を五十三の数に分けたことは、この善財童子の求道譚に、ヒントを得たものと存じます。
「林を出《いで》て還《かえ》ってまた林中に入る。便《すなわ》ち是れ娑羅仏廟《さらぶつびょう》の東、獅子《しし》吼《ほ》ゆる時|芳草《ほうそう》緑《みどり》、象王|廻《めぐ》る処《ところ》落花|紅《くれない》なりし」
と仏国禅師《ぶっこく
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